HNN <ハリネズミねっとわーく>

2008年03月02日

サムライ社会学 

この企画では、さらりと読める偽社会学をご紹介したいと思います。 偽と言ってもウソを教える訳ではありません。 ただ、ちょっと普通と違うだけです。 まあその辺は読んでいただければわかると思います。 あっ、今「社会学なんて…」と日替わりコラムへ逃げようとした方、そうあなたです。 あなたのような方にこそ読んで欲しいんですよ。


社会学は本来楽しいもので、庶民にこそふさわしい武器なんです。 え、だけど権威のある人ばかりが小難しい話ばかりやってるじゃないかって?


そうですね。その通り。そこが問題なんですよ。 彼らは社会学というものを、大変難しいのだという幻のオーラで囲って、 弱者を近づけないようにしているんです。


そして。我々はとてつもない高尚なことをやってるんだというフリをしています。 経済学者とタッグを組んで、政府や大企業に都合の良いデータばかりを捻出 したり、逆に都合の悪いデータを隠したりもします。


敷居が高い理由はそこなんですよ。 社会学という武器を、国民みんなが持ってしまったら大変です。 ズルが出来なくなってしまいます。


どうです?ちょっとは興味が沸きましたか? 安心してください。私が紹介する社会学は、実に単純で、面白いものばかりですから。 ユニークな視点で楽しむ社会の側面学習…灰色社会学とでも言っておきましょうか。


説明はこの辺にしておきましょう。 では、どうぞ。。


@ 団塊世代の退職による影響の謎  


昨年からはじまった団塊世代の一斉退職という現象があります。 人口統計では07年から09年の3年間が佳境とされていて、今年は ちょうどその中間点なわけですね。


06年には各メディアより、色々と危機感を煽る記事が連発しましたが、 実際のところはどうなのか、気になるところじゃないですか。 


内閣府の昨年の調査(高齢者の社会参加の促進)では、 【団塊世代の退職への影響は】というアンケートに対し、 特に影響はない(43.8%)がかなりある(9.2%)を大きく上回ったんです。


多少はあるが39.8%だったことが救いだが、アンケート項目に、 【まったく影響ない】が無かった「団塊世代に優しい」ものだったことを 考えると、寂しい調査結果です。


更に、肝心のその影響についても、人件費などのコスト軽減・職場の 若返りによる活性化など、なんとも冷たい本音が出ています。 これではまるで、団塊世代がいなくなってせいせいするという人が多いという 裏づけになってしまいます。


金銭面についても、好影響と考える人が多いようです。
  団塊世代の退職を考慮した人件費の中期的推移(日本経済白書)を見ると、

06年  前年比 マイナス0.1%
07年  前年比 マイナス0.7%
08年  前年比 マイナス0.78%
09年  前年比 マイナス0.8%

とコスト圧迫していたものが、

10年 マイナス0.6%
11年 マイナス0.5%

と再来年以降、急速に低下する見通しが立っています。


一部では管理職の確保への懸念があるものの、影響がないと答える 声が圧倒していることに変わりはありません。 団塊世代が特別扱いされたり、辞めることによって何か恐ろしい悪影響 があるかのような風潮は、でたらめのようですね。


では、なぜあれほどまでに、団塊世代の一斉退職に対し、 危機感を煽る風潮が出回ったのか。気になりませんか。 では解決編をどうぞ。


推測・解決する手がかりはいくつかありますが、とりあえず今回は、 わかりやすいものを選んでみました。


思い出してほしいのが、平成16年に策定された 「高年齢者雇用安定法」です。男性の定年を65歳にしたことで、 平成18年から徐々に定年を延長していく「定年延長計画」というものが、 現在も実施されています。22年には64歳、25年には65歳になり、 更に延長する余地も残しています。


更にその計画の準拠となっているであろうデータとして、総務省の 「65歳までの雇用確保を目指して」に掲載されている、企業への アンケート結果というものがあるんです。


Q.定年後の高齢者を継続して雇用する理由は

A.定年到達者の知識・経験 
  高齢者でも働ける職場であるため
  定年到達者の就業機会を提供するため
    高年齢層は定着率が良いから 


なるほど。たしかにそういう面があるんだろうな…。 と思いましたか?


ここに落とし穴があるんです。 このアンケートを見て、何かおかしいと思いませんか。 「定年後の高齢者を雇用する理由」、つまり団塊世代とは誰も言ってないんです。


更に、「雇用をする理由」なんですから、現在雇用をしている企業に聞いている 訳ですよね。と思って細かい注釈を虫眼鏡で見ますと、 「有効回答数は2466社で、本表は継続雇用制度を導入している企業分(1478社 )を集計したものである」とあるわけです。


既に継続雇用を導入している企業だけに聞いたのですから、団塊世代に有利な 証言のパレードなのは当然なんですよ。当たり前です。 ということで、団塊世代を積極的に労働市場に残す理由のひとつとするには、 ふさわしい資料とは言えなんですよ。


いやー、データの裏側が見れて良かった、社会学ってこういうことか、なんて 言っているあなた。甘いです。


よーく考えてみてください。上のアンケート。 回答した人は、企業としての雇用方針について答えていますよね。


ということは当然ながら、雇用・採用の決定権が与えられている人です。 さぁ、企業においてそのような生殺与奪の権利が与えられている人は誰ですか。 そうです。誰もが恐れる人事部長ですね。 神の手を持ったかのように社内を闊歩する、あのダンディーなおじさまです。 決してきもいだとか、肩を触られてセクハラだとは言ってはいけません。


人事部長、部長とは呼ばなくても人事の最高決定者は何歳でしょう。 正確なデータが無かったので、人事と最も交流する派遣会社の営業マン5人に 協力いただいて、名刺をたよりに最高権者の年齢を書き出してもらいました。 関東圏内ですが、291社の統計です。


すると…推定年齢になりますが、約53歳と出ました。営業マンの推定年齢なので、 まったく的外れだとは思いません。 100人以上の規模の企業に絞ると56歳になります。 まぁ結構アバウトなデータなので、詳細は問わないことにしましょう…。


ですが、大事なことは、 「アンケートに答えたであろう人は、皆定年問題の佳境にある人たちだ」 ということです。定年後も働きたいと思っている人は、迫る定年に向けて、 不利な発言をする訳はありませんし、定年したらさっぱり辞めようと思っている人も、 現在高齢者雇用をしているんですから、マイナスなことを言うわけはないんですね。 つまり、結果ありきなアンケートだということです。 


さぁここまで読んで、からくりを解けた気になっていますか。 残念ながらここまででは80点です。 解いたカラクリを元に、その先の何かを探す作業こそが大事だと私は思うんです。


これだけ色々広げといて申し訳ないのですが、ここまで壮大なスケールで 団塊世代に対して「手厚い」保護をするのに、氷河期世代や、ワーキングプア、 若年化している野宿者などに対してはずいぶんな対応ですよね。


「高齢者雇用について」はこれでもかと調べて保護するのに、 「氷河期雇用について」は絶対に調べません。定年者を継続雇用すると助成金が 出る、つまり政府はお金を払ってでも団塊世代を守るのに、氷河期世代や野宿者 を雇ったら助成金、という流れにはならないんですね。  ネットカフェ難民やニートの中心は30代前半だそうです。


不思議ですよね。


あっ、そろそろ時間ですね。 最後の不思議を解くには、もう少し偽社会学を勉強する必要があります。 では、また次回をお楽しみに。


Ken Kikuchi


  
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