2008年04月19日
9条論客 天木直人によるコラム
※天木さんは本来昨日のコラム担当ですが、今回の違憲判決につ いて、やはり天木氏に語ってもらわない訳にはいきません。エッセイ を休み、意見判決について書いていただきました。
自衛隊のイラク後方支援活動は違憲であると断じた名古屋高 裁判決
今週の私のメッセージでは、人間賛歌の続きとして山本周五郎の作 品の中から私の好きなものを紹介しようと思っていました。
しかし、私が四年あまりかかわってきたイラクへの自衛隊派兵違憲訴 訟について、今日(4月17日)、歴史的な判決が名古屋高裁で下され ました。ですからそのことについて急きょ書くことにしました。
18日の新聞では各紙で一斉に報じていますが、新聞では決して書か れることの出来ないこの訴訟のドラマについて連載で書いて行きます。 それはまた、人間賛歌の一大ドラマであったからです。
三権分立という民主主義の原則については、皆さんは教科書で学 んだはずです。すなわち法律をつくる立法と、その法律にもとづい てなされる行政(政府)の政策、そしてその二つの間に齟齬がない か、つまり政府の政策が適法に行われているかどうかを判断する 司法、という三つの行為は、独立していなければならないという原 則のことです。この三つの権力が分離・独立し、お互いに監視、牽 制し合う(チェックアンドバランス)ことによってはじめて、私たち国民 の利益が守られる、という原則です。
しかし日本の現実は、圧倒的に行政府(政府)の権限が強いので す。すなわち、日本の制度は議院内閣制といって、多数議員を擁 する政党が政権を握り法律をつくる権限を持っています。そして政 府が憲法や法律を遵守しているかどうかを判断する立場にある裁 判官は、裁判官であると同時に国家公務員(官僚)であり、政府に 従属しています。
従って、政府が決定した「自衛隊のイラクへの派遣」が違憲である などという判決を裁判所が下すことは、まずありえません。なぜな らば、そのような判決を下した裁判官は、たちどころに政府ににら まれ、出世の道を閉ざされることになるからです。保身を考えれば、 そのような判決を下すおろかな裁判官はいないからです。
ところが名古屋高裁の裁判官は、今日4月17日の判決で、正面か ら政府の政策を違憲であると断じたのです。しかも、憲法9条(戦争 放棄、軍隊不保持)違反であると断じたのです。
憲法9条に関する違憲訴訟では、これまで一度だけ違憲の判決が 出されました。それは1969年に行われた長沼ナイキ事件の判決 です。すなわち、政府が北海道夕張郡長沼町に航空自衛隊のミサ イル基地を作ろうとした時、地元住民が自衛隊は違憲であり基地建 設に公共性はないと処分の取り消しを求めました。札幌地裁はこれ を認め、自衛隊を違憲であるとしたのです。
この判決は国が控訴して、札幌高裁、最高裁ともに地裁の判決を否 定しました。それ以来憲法9条に関する違憲訴訟は、高度の政治的 判断を必要とするもので裁判になじまないとして、ことごとく訴訟は却 下されてきました。
そんな中で、今日下された判決は、日本の国民の中に定着した自衛 隊であっても、その行動によっては違憲となるとし、初めて実質的な 審理を行い、今行われている航空自衛隊による多国籍軍に対する 輸送協力は、戦闘行為に加担するものであり、違憲であると明言し たのです。
これはわが国の戦後の歴史ではじめての本格的な違憲判決です。私 が画期的な判決であると強調する理由がそこにあります。
官僚である裁判官がこのような勇気ある判決を下すに至った背景に は、数々のドラマがありました。その根底に流れるものは多くの人た ちの人間愛でした。
人間は色々と悪いことをしたり、だらしがなかったりしますが、それで もやはり人間は素晴らしいと、私が思う理由がそこにあります。
※ 天木直人氏は自身ブログにて、多数の派兵についての記事を 掲載している。駆けつけ警護についてもっと問題視すべきと警 鐘を鳴らされたのも同氏である。
管理人より
各紙でも天木さんのことが大きくとりあげられております。以下のリンクもご覧になってみてください。
東京新聞:【関連】イラク戦争反対で『不当解職』 原告に 『すべてが報われた』 天木元レバノン大使 :社会(TOKYO Web)
イラク空輸・高裁判決、違憲判断「実質勝訴」と原告ら : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
9条のある国に生きていてよかった 自衛隊イラク派兵は違憲 名古屋高裁判決−JanJanニュース
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