HNN <ハリネズミねっとわーく>

2008年04月25日

私のために涙を流してくれた人(その1)

あの名古屋高裁の歴史的な違憲判決の裏でもう一つの判決があ った事は世の中にはまったく知られていません。


その判決とは、イラク戦争に反対して外務省から解雇された私の 人事について、それが不当かどうかという判決でした。 私の事に関する判決であるので、私も書きづらいところがあります。 しかし、これは私でなければ書けない一つの人間ドラマであると思 っています。だから本邦初公開、最初にして最後の私の告白をここ で書くことにします。


なぜ私があれほどまでにイラク戦争に反対したか、そしてその戦争 に加担した小泉元首相を非難したか。


それは、米国とイスラエルの非道な中東政策の前に、なすすべなく 犠牲になって死んでいくアラブの民の悲しさと悔しさを「知ってしまっ た」からです。この事は非常に大きい私のテーマなので、また機会 をあらためて書きたいと思います。


ここではなぜ私が自衛隊のイラク派兵違憲訴訟に訴えたかという ことから始めます。


日本の政治も、世論も、あのふざけた小泉元首相の暴挙を止める ことが出来なかった。それならば、最後は「法の支配」によって権力 のおごりを正そう。日本政府はイラク戦争を支持したけれど、国民 はその政府を違憲であると訴えたのだ。この事をアラブの人たち に、そして世界中の人たちに示そう。そう思ったからです。


しかし、この違憲訴訟には、裁判上の大きな壁がありました。つま り日本の司法は高度に政治的なテーマについては、司法の対象に はなじまないとして、まともな裁判を避けるのです。


これは司法の責務の放棄なのですが、裁判官もまた国の使用人 であり、主人である国を裁くことは出来ないのです。特に憲法9条 についてはその違憲性を裁判所が正面から論ずることは、まずあ りえません。


しかし、「政府を敵にすることはできないから審理しない」とは、さす がの裁判官も言えませんから、法律技術論を展開し、そもそも国 の政策の誤りを訴えるのには、訴える者が国の政策によって自ら の権利を侵害されたという事実がなければならない、という論理を 振りかざします。


そして名古屋地裁の原告3000人あまりの人たちは、すべてその 権利はない。つまり国が自衛隊をイラクに派遣したからといってお 前たちは何の被害も受けていないではないか、国の政策に反対 であればそうではない政府を選べばいいではないか、そのために 選挙があるのだ、というわけです。


こういう論理を振りかざして、原告の訴えは審理に入る前にことご とく門前払い(却下)されたのです。


ところが、私だけは具体的な利害関係があるのではないか、つま り政府の違憲政策に反対したという理由で解雇されたとすれば、 それは被害を受けたという事になるのではないか、という事で、切 り離されて裁判されました。


私は、自分の人事を不服として訴訟を起こしたのではありません。 ですから自分の人事の不当性を全面に掲げて一人訴訟を続ける という事は本意ではありませんでした。


もし本当に私が自分の人事を不満として訴訟を起こそうと思った のであれば、それは違憲訴訟などではなく、一人で損害賠償訴 訟を起こして、職場復帰と損害賠償を求める戦いに挑んだでしょう。


しかし、自分の人事の不当性を争うことが一つのきっかけとなっ て、裁判所が自衛隊のイラク派遣の違憲性を審理せざるを得な いようになるのなら、そのために分離裁判に応じることも意味が ある、それは3、000人の原告の思いに応えることだ。そういう弁 護団の熱意に従って、私は一人になって分離訴訟を続ける事に しました。


そこから一つのドラマが始まるのです。


私が解雇を言い渡されたのは外務省官房長からの一本の電話 でした。そしてその本当の理由をはじめて聞かされたのは、退職 の辞令を直接手渡された時の外務次官の言葉からでした。


つまり私の退職の本当の理由を知っているのは、退職を迫られた 私と、それを連絡してきた外務省の官房長、そして私を辞めさせる 決断をした外務省事務次官の三人だけなのです。


その秘密性をいいことに、私の人事の不当性を争う分離訴訟の過 程で、外務省が裁判所で述べた陳述は、まったくの嘘の答弁でした。


そして名古屋地裁の第一審判決は、その外務省の嘘の陳述をその まま鵜呑みにして、私の辞職は外務省が解雇したのではなく、自ら の意思で辞職したのだ、つまり外務省が解雇したのではなく、自分 から辞めると言い出したのだ、だからこの人事に不当性はない、と 断じるものでした。


これにはさすがの私も我慢できませんでした。ここまで卑劣な事を外 務省はしてくるのか。裁判所はここまで不当な判決を下すのか。


私は弁護団に頼んで即座に控訴して戦う事にしたのです(続く)。


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天木直人 


 
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